人の手と自然の力、近自然工法のお話

屋久島旅で印象に残ったお話のひとつ、近自然工法のこと。

屋久島は自然災害の多い場所で、毎年被害があるようです。今年も大きな台風が直撃し、木が倒れ、道が崩れ、屋久島旅の予定が変わった方は多かったことでしょう。私もそうです。

道が崩れるということについては、アスファルト化など人の手が入ったところが崩れている、自然のままのところは水が勝手に曲がって崩れるところを避けているので大丈夫というお話に、なるほどと思いました。それで、自然のままだとどうなるかということをふまえた登山道整備を始めているとのことでした。山に、森に入らせていただくには登山道は必要。でも人ありきで手を入れるのではなく、自然ありきで手を添えさせてもらう。近自然工法を私にもわかるようにざっくり説明していただくとこんな感じ。

子どものときに、砂で山を作っててっぺんから水を流す遊びをしてましたが、水は勝手に曲がって落ちていったように覚えています。その過程で水量やスピードが調節されて、何度水を流してもお山は崩れなかったこと、確かにそうだった。

まっすぐの階段道ではなく、くねくねと、水が森の中を自然に流れていくように道を整えていく。これは、登る方にとっても負担が少なくてありがたい登山道なのです。わざわざまっすぐの階段道をジグザグに歩いているくらいですから。

良かれと思う最短距離を整えることを人を育てることに当てはめ、災害による崩れと近自然工法を思い出しながら考えると、もしかしたら人育てにも近自然工法的なものが適しているかもしれないと思い当たります。その人に沿った道筋に従おうとすること。それが環境を作って見守って待つということかと。このように水が流れるだろう、ではなく、このように流れているのでここを道としよう、とする。一番崩れず、疲れない気がします。

気候は過酷で、土壌は栄養がなく、それでも1000年以上生きている木がたくさんある屋久島。生き方さまざまで、倒木の上にしっかり根を張る二代目三代目や、隣とつながってしまう木など、不思議な風景をたくさんつくっていました。奇怪なものたくさん。しかし放つ生命力がとんでもなくて圧倒されました。

樹齢1000年を超えるものを屋久杉と呼ぶそうです。巨大なのですが、それでも環境が厳しいため少しずつしか育たない。年輪が狭いです。新潟の杉と比べると、年輪の差がはっきりわかります。屋久杉は、その分硬くてしっかりしていますね。

アクシデント満載のため、訪れること自体がゲームになると思いました。そんなゲーム、島にありました。