おもちゃ屋を始めて13年になりますが、近年はこれまでになかった現象に出会います。それは『爆発的な』ですね。メディアとSNSの影響が大きく、ある一つの品物が長期品切れになるくらいの大ブームになる、ということです。テレビもネットも開店当初からもちろんありましたけど、影響力という点ではかなり大きくなっていると思います。
今年に入ってからcuboroです。クルテクの在庫も今からっぽで、先々までご予約をいただいています。長く紹介してきた大好きなおもちゃなので認知度が高まったのは嬉しいことです。店内ではサンプルで実演したり、お子さんの様子とともにおすすめのシリーズをご一緒に考えさせていただいてきました。追加セットを足すときのお話し、日頃のメンテナンス、アフターケア等、長く使っていただきたい品物だからこそ、お話しながらおすすめしてきました。
爆発的ブームとなると、そのような細かい対応の前に右から左へとあっというまに品物がお客さまの手に渡ってしまいます。cuboroのスタンダードやベーシスは、メーカー推奨の対象年齢が5歳〜になっています。でも、メディアでは『3歳頃遊んだ様子』と紹介されたので、3歳頃からのお求めが増えました。もちろん3歳から夢中になって遊ぶ子もあるでしょう。でも3歳より5歳のほうが適していると思えることもいくつかあります。3歳は見えないところに対しては想像力が十分に働かず、cuboroの醍醐味である一度ビー玉が消えて見えないところを転がり別の場所から出てくるというところをおもしろいと思えないことがあります。それであれば、主に見えるところを転がるクゴリーノのほうが楽しさを味わえるかもしれません。
また、手先の巧緻性は3歳から5歳の間に大きく育ちます。器用になるということです。cuboroはブロックがズレてしまうとビー玉が止まります。直そうとすると別の場所がズレます。ここで修正するには大人でも器用な手つきと根気が求められます。玉転がしを楽しみたい3歳さんには、ストレスが生まれるところで、場合によってはおもしろくなくてやめてしまいます。玉が転がることが楽しいので、むしろ店内ではシロフォン付き玉の塔やばけつの玉落としが3歳さんにはとてもよく遊ばれています。これらはビー玉の大きさからしても決して赤ちゃん対象のおもちゃではなく、メーカーも3歳からと注意書きしているものです。
もしcuboroが3歳のときに十分に使いこなせなくても、成長に伴って少しずつ試していただければ嬉しいのですが、適齢ではないことが理由で興味を示さなかったときに「ダメだった」でお蔵入りしてしまうともったいない…と思うのです。一緒に品物を見て、遊びながらお話しながらお渡しできると安心なのですが、それが追いつかないのがブームというものなんだな、と。
cuboroはスイスで長期間かけてしっかり乾燥させた木材を精密に加工しているのですが、高温多湿の日本に入ってくると湿気を吸って膨らむことがあります。サイズが狂うと台無しになってしまうおもちゃなので湿気に対しては気遣いが必要なのですが、お蔵入りしている間、次に出した時はカビたり膨らんだりしていることも、これまでもありました。そうなると元に戻すのが難しいです。
店内からお手渡しする品物は、どれもなんとなく子どものような思い入れがあり、遊んでもらってるかな、状態は良いかな、と気になってしまうものなんですよね。そんなこんなで、認知度が高まる昨今のご紹介は嬉しい面と、一方で余計な心配もあるのでした。
クルテクからお求めいただいた品物については後々のご相談もお受けしておりますので、遊んでいくうちにお困りなことやご不明なことがございましたらお知らせくださいね!