特に小さい頃の木のおもちゃの良さは、子どもの好奇心を引っ張り出すことだと思います。
子どもはまっさらでこの世にやってきて、出会うもの全てが初めてで新しいから、何にでも関心を持つけれど、だからこそ出会うものは大人が選びたい。
まずは、人と自然を十分に感じて欲しい。おもちゃは急がなくても良いと考えています。でも、おもちゃがあることで大人が嬉しい。いい音を聞かせてあげて、赤ちゃんがニコッとすると大人が嬉しい。大人の嬉しいは、子どもに良い影響で伝わります。だから、最初は子どもが気持ち良いことを感じられるおもちゃが良いです。木の音や手触りがそう。子どもがそれで遊ぶことを求めるより、心地よくてお互いゴキゲン、を味わってほしいと思います。
やがて成長とともに自分から周りのことに関心を持つようになってきます。やたらと手を伸ばしたり、投げたり落としたり、あらあら大変なこともありますが、ちょっと考えたいのは、「少し先」のおもちゃを選んでしまっていないかということ。おもちゃは、こんなことができるようになるための訓練用具ではないから、この先習得して欲しい動きのために早めに用意するのは子どもにとってはミスマッチなこともあります。次にできることが少し早くできても、最終的に人よりできることが増えるわけではないので、その時その時の層を厚くするほうがその子らしさが際立っておもしろくなると思います。
そこで、木のおもちゃの良さが表れてきます。
基本的に、木は精密な細かい加工には向いておらず、ざっくりシンプルです。大人も、見るからに難しそうなことにワクワクする人と、見ただけでパスという人といるでしょう。大人は人生経験からワクワクとパスを選べるけれど、子どもにはそこまでの予備知識がないから、一律シンプルから入っていくのが良いです。シンプルなものほど受け止める度量が大きいので、その子らしい遊び方に応えてくれます。木は丈夫ということもその点で適しています。その先は人それぞれ。ごっこでも、読書でも、工作でも、ボードゲームでも。
遊びは積み重ねなので、良いおもちゃのデビューは早い方が良いと思います。それは、早くからいろんなことができるようになるためではなくて、好奇心を持って自分から働きかけ遊ぶという行為を長く経験したほうが遊び上手になるから。幼児期頃、赤ちゃんの頃から遊び慣れて来た方と、初めて能動的に遊ぶということに触れた方とは、発想や集中に違いがあると感じます。もちろん、その違いはすぐに埋まりますけど。
店も15年を過ぎると、長いお客さまはもう中学生や高校生、大学生です。
塾にも通わず、あまりテレビやタブレットに触れず、たくさん本を読んでいっぱい遊んできて、学校の成績に限らなくても好きなことがあったり、自分の考えを持っていたり、もちろん勉強が好きな人もたくさんいます。好奇心は意欲の源ですから、おもちゃや遊び、周りの大人との出会いからたくさん引っ張り出されると良いと思います。
今小さいお子さんのパパママさんが、考え方が柔軟になっているのかなと、世代ひと回り離れて感じることがあります。早くたくさんのことができるようになることから、その子らしくあることをより求めておられるような価値観へと。とても良いことだと思うのです。店も、実際におもちゃに触っていただけるという一番の役割をより果たし、ひとりひとりの「らしさ」を好奇心から見つけ出していく発信地になれたらと、ますます思います。