1月22日に開催された1dayラボの様子です。1dayラボスタッフのレポートを店主がまとめました。お写真の掲載許可をいただきました。ありがとうございます。
テーマは「羊毛研究」
モロッコやネパールで作られる、手織絨毯を取り扱っていらっしゃるトリコラージュさんと、羊毛染織家の吉田麻子さんにご協力頂いた今回のラボ。スタッフ自身が羊毛、そして羊の魅力に感化され、準備段階でわくわくが止まらない、学びの多い企画となりました。
あれもこれもやりたい!伝えたいこともたくさん!!
全てを伝える事は、一回のラボでは到底難しかったと思うのですが、参加してくださったお子さんたちにとって、これからの生活の中で、ふと思い出したり、考えたりするひとつのきっかけになればいいなぁと思います。
【スタート】
まずは、絵本を一冊。「ペレのあたらしいふく」を読みました。
ペレは、こひつじを一匹もっています。
そして、そのこひつじの毛を刈り取り、お手伝いを交換条件に、周りの大人に羊毛仕事を頼みます。
そして、ついには自分の新しいお洋服を仕立ててもらい、羊にお礼を言う、というお話しです。
ひつじの毛から、洋服になるまでの過程が分かりやすく、今回のテーマを伝えるのにぴったりだと思いました。
【羊毛】
なにも特別な素材ではないですね。とても身近な素材です。みんなで、今日着てきたお洋服のタグを見てみました!わたしの服は、ウール、コットン、モヘアなどが記載されていました。こどもたちも、口々に〇〇って書いてある〜!と、教えてくれました。
トリコラージュさんのウール100%のじゅうたんにも触れてみます。ふかふか〜!とっても気持ちのいい触り心地です。これも、さっき絵本で見たように、ひつじさんの毛からできているんだよ〜!と、子どもたちにひつじの原毛を見てもらいました。
今回の原毛は、新潟市内の農業研修施設で飼われていたひつじさんの毛を、吉田さんから特別に分けて頂いたものです。洗う前の原毛のにおいを嗅いでみます!みんな、くさ〜い!!!そう、しっかり、生きていた動物さんのにおいがします。洗って、乾かしたものも見てみます。こちらは、においはどうかな?見た目は??色々なことに気がついていく子どもたち。洗った方は、白いね。洗う前は、茶色い〜先っぽが黒くて固いよ?なんでー?洗ったのに、まだなんか細かいゴミみたいのついてるー!なにこれ?草?においは、そんなに臭くないかも。などなど。
【気づいたことメモ】
今回は、一人ひとりに画用紙を渡して、原毛を貼ったり、気づいたこと、感じたこと、疑問に思うことなどを、それぞれ書き込んでもらいました。板書や、書き込み式のプリントはありません。どんなふうにレイアウトしよう。何を書いたらいいのかな。書き始めるのに悩んでしまう子も、もちろんいますが、そんな時は、スタッフが寄り添います。どこに貼ろうか?並べると、比べやすいかな?どんなこと感じた?じゃあ、それを書いてみよっか!
ひとりひとりから出てきた言葉、発見をスタッフが声に出してシェアする事もあります。羊毛を手に取っては、どんどん書き進めるこどもたち!
【羊毛研究】
次に、毛糸の研究です。ペレは、そのひつじの毛を、どうしてたかな?と、スタッフが質問しました。
すいてたー!そめこ?で染めてた!糸車もでてきた!
一緒に絵本を振り返ります。
ひつじの毛から、いろいろな製品が作られますが、絨毯やセーター、手ぶくろにマフラー、ツイードのスーツも、羊毛を毛糸にして、織ったり編んだりしていますね!そんな毛糸を、詳しく観察してみました。サンプルの毛糸を渡すと、ほどけてバラバラになった!ラーメンみたーい!クネクネしてる!もっと細かくなるよー!と、こどもたち。
なにで色つけたのー?そめこ?今回はマリーゴールドで染めたものだよと伝えると、それ育てたことあるー!と教えてくれた子もいます。会話のやりとりが、本当に楽しい時間です!友だちの様子もみて、あー!そんな風になるんだ!と、やってみる子もいます。学び合っていますね。
今回は、これも、画用紙に貼り付けて、まとめていきます。黒い紙の上に載せると、毛の一本一本までよく見えますね。一本だけ、抜き出せる〜?と尋ねると、みんな挑戦してくれます。こんなに長いのとれたー!細いねー!どっか行っちゃいそう!
そうなのです。細い細い毛が集まって、絡み合って、その間に空気を含むのでウール製品は暖かいのですね。寒い冬に、私たちを暖めてくれるウール製品は、このような素材から出来ていることを、感じてもらえたら嬉しです。ちなみに、その毛同士の隙間のおかげで、吸湿放湿性にも優れているなどの特徴があるとのこと。自然素材の特徴を知り、工夫しながら快適に暮らそうとした、先人達の知恵に思いをはせます。
一本の毛を指先でなでて、キューティクルについても少しお話しました。みんなの髪の毛はどう?私たちの髪の毛も、つるつるの方向と、キュッキュとする方向があるね!ひつじさんたちも、私たちと同じ、生き物なんだよねー!
【毛糸づくり】
そして、いよいよ毛糸づくり!先程の洗ってある羊毛にはまだ、干草などのゴミがたくさんついています。ゴミをとってから毛糸にするよと、まずはごみ取りから。最初は一個一個手で摘んでとろうとする子どもたち。めっちゃたいへん〜!とってもとってもいっぱいあるー!ゴミ細かくてとれなーい!
すると、経験のあるお友だちが、こうするとうまく取れるよ!と、教えてくれました!そのやり方だと、速くゴミがとれて、しかもふわふわになります!みんなで一生懸命、ゴミを取りました!そして気づきます。すぐにふわふわになるところと、いつまでも、なんかごわごわするのがある。なんでなんだろうね?これは、体験しないと分からない事でした。内側の毛と外側の毛の違いかなー?洗い方が違うのかなー?いろんな考えが浮かびます。
ゴミを取った羊毛は、しろーい!ふわふわで気持ちいいねー!なんかかわいい!このまま持って帰りたーい!と、みんなお気に入り。作業の進み具合には、個人差があるし、じっくり取り組んでもらいたい。ということで、ここで、前半のまとめをさらに書き込んだり、作業を続けたり、羊毛を毛糸に仕上げたり、休憩をしたりと、それぞれのペースで活動しました。
自分で区切りをつけて、お昼ごはんというのも、クルテクラボの特徴です。それぞれ、力を入れたいことをじっくりやりました。
ごみ取り後の羊毛は、カーダーというブラシですいて、スピンドルという道具で糸に紡ぎました。スピンドルは、少し難しいので、こどもたちには、スピンドルを回すお手伝いをお願いしました。回転を利用して、羊毛によりをかけて行きます。
よりをかけた糸を2本合わせると!よりが戻ろうとする力で2本が一本に合わさって、先ほど研究した毛糸と同じような見た目になります。こうやって毛糸ができていたのですね!
できた毛糸は、先程まとめたレポートを綴じて、「ひつじノート」に仕上げました。手紡ぎ糸ならではの、でこぼこした風合いがとっても可愛らしい毛糸です。自分の手で作った毛糸は、たとえ短くても、でこぼこでも、特別なものになりましたね。うれしそうな子ども達の表情にも癒されました。
【作品作り】
午後は、作品作り。羊毛染織家の吉田麻子さんが染められた、カラーの羊毛を出しました。カラフルな羊毛たちで、何を作ろうかな?ワクワクする時間です。毛糸作りも継続中。先ほどのカーダーを使うと、色を混ぜることもできます。この色とこの色を混ぜたい!青と白の羊毛を混ぜたら、水色になるはずだよね?やってみたい!
カーダー、自分で使ってみたいな!みんな、意欲に溢れています!モールを使ってちょうちょを作ったり、小鳥を作る子もいました。そのうち、ココとココをくっつけたいんだけど。。。と、相談にやってくる子が。待ってました!とスタッフ。今回、ニードルパンチも用意していました。ニードルパンチという先がギザギザしている針を使うと、羊毛のキューティクル同士が絡まり合い、くっつくのです。とてもとがっている針なので、刺して怪我をしないように、全員一斉に使い方を説明をしました。麻布に羊毛を刺していくワークも紹介しました。指を刺さないように、なるべく麻布の方を押さえてねー!みんな慎重に針を刺していました。
それぞれが、素敵な作品作りに集中し、お部屋はとても静か。穏やかで気持ちのいい空気が流れていました。作品が出来上がると、スタッフに見せに来てくれる子もいます。これは、△△な〇〇なんだよ!とても素敵な世界観。みんなにも見て欲しいな〜と思い、お部屋を美術館にすることにしました。タイトルもカードに書いて、好きなところにディスプレイします。次々に新しいことを思い付き、試して作品をつくる子、とにかく色を混ぜてきれいなカラーを作ってみたい子、1匹の鳥さんを、納得いくまで丁寧に作りたい子、好きな動物さんのシリーズを着々と作っていく子、みんな取り組み方は、様々です。だけど、みんな真剣!好きなことやりたいことに、夢中になる時間は、とても素敵な時間だなと感じました。
そして、あっという間にお迎えの時間。お迎えにいらした親御さんにも、展示を見ていただき、うれしそうな子ども達でした!作品は、大事に袋に入れて、お持ち帰りいただきました。
身近な素材である羊毛。私たちの暮らしの中で、どのように使われているか。それは、どこからどのようにして、手元に届いているのか。羊と人の営み、自然との共生など、深めれば深めるほど奥深いテーマです。そんなことを、今後考える機会があるかもしれない。その入り口、第一歩目に、今回の体験が役立ってくれたら嬉しいなと思います。